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月刊ラティーナレビューより
電車の中でふとおもいたって、月刊ラティーナ10月号に載せていただいた
アルバム『雨の森』のレビューをみなさまにお届けです。
自分の作品に文章を書いていただけるのは不思議な感じもありつつ、でもとても嬉しい。
DayByDayCDreview】
yukitaka nagami + mitsuko arai『ameno mori』
森の鼓動のようなチェロのピチカートで始まるアルバムは3曲目のエドゥ・ロボのスロー・ワルツまでに雨降る森のイメージの中にすっかり引き込まれてしまう。ピアノとチェロのデュオによる本作は、極めてメロディアスな楽曲ばかりなのだが、ピアノとチェロの旋律だけでなく、楽器の共鳴や残響、音の間までが溶け合って、森や木々、蕭蕭と降る雨、風や葉擦れ等々が鮮明に感じられる。ジョビンやドナートの楽曲も新鮮なアレンジが施され、オリジナルや即興曲に溶け込んでいる。ヒナステラを思わせる汎南米的なピアノ曲⑦モダンな響きにアレンジされた⑧辺りは動物たち、チェロがゆったりと優雅に歌う⑨⑪辺りは人の気配を感じる。筆者のCD棚では、林正樹、藤本一馬、ジョアナ・ケイロスなどスパイラル・レコードの諸作と同じアクセスの良い一等地に置くことにした。森のように空気を浄化する作用があるアルバムなのである。text by ノビオ (月刊ラティーナ2017年10月号掲載)